いつもインスタント各店をご利用頂きありがとうございます。
早いものでいくつかの店舗は本年の最終営業日となりました。今年も1年本当にありがとうございました。今年はインスタント25周年として、何年も前から考えていた事、準備を進めてきた事、新しいご縁で動き出した事、など僕だけでなくスタッフ一同全員が山盛りのタスクを抱えて邁進した年でありました。いくつかのことは予定通り進み、いくつかのことは断念し、いくつかのことは予想以上の結果となりました。
今年はいまだゴールが見えない世界の大きな変化の中で、僕らだけでなく多くの人が右往左往した年でもありました。僕らのマターで言えば、GWオープンの予定だった宮下パークが大きく予定変更し、それに合わせて開催する予定だった25周年イベントも、多くの時間をかけてブラッシュアップを進めてきた企画も、予想外の展開に完全にゼロの状態から企画の作り直し、組み立て直し、リスケを余儀なくされ、それも一度ではなく何度も何度も叩き潰されてはもがき苦しんで前進し、また叩き潰されてゼロ地点に引き戻されて、何度も諦めかけましたが25周年は今年しかない、となんとか僕らの感謝と可能性を形にしたくて諦めずに前進しました。チームでの取り組みも幾度となく続く予定変更や企画キャンセルを通して自信や連帯感という足元を揺さぶられ、モチベーションを試され、それでも前を向きアイデアや企画力を研ぎ澄ませてやってきました。ここまで皆さんにご覧頂けた様々な25周年マターはインスタントの全スタッフ、そして様々な企画に関わって頂きました沢山の皆さんの陰日向となく繰り返された誠実な努力と前向きな気持ちで形になってきたのです。改めて今年の僕らの挑戦にご協力頂きました皆さん、そしてそれを楽しみにしてくれた方々、練り上げたものをご覧頂きました多くの皆さんに心から感謝させて頂きます。ありがとうございました。
ちょっと話はそれますが、僕がなぜスケートボードショップを始めようと思ったのか、という理由を少し書かせていただきます。僕がスケートボードを始めた頃のシーンはとても独特なものでした。今思えば日本での第二次スケートボードブームでスケートボードに出会った方たちは「ちょっと人と違う人」が多いような気がします。流行っていたから飛び乗った人ももちろんいるかと思いますが少し時間が経てば離れていき、流行に関係なくそこからシーンを作ってきた人たちは独自のファッションやカルチャーだけでなく、物の見方、考え方、取り組み方、納得のし方、など僕が地域社会や学校では出会ったことがない魅力に溢れていました。スケートボードを通して出会ってきた人は全員それぞれのキャラクターやスタンスがはっきりしています。そしてそのスタイル、スタンスはぬるく育った僕にとっては強烈なインパクトで、猛烈な魅力を放ち、目を逸らすこともできないくらいキラキラしたものでした。スケートボード、スケートボーダーの魅力に気がついてしまうと毎日毎日考えることはスケートボードのことばかり、誰とどこに滑りに行こうか、次こそはあのトリックをメイクしたい、ウィールがパンクしてるから交換したい、新しいTHRASHERがすぐ見たい、とスケートボードのことで頭がいっぱいでした。そしてある日かなり酷めのケガをしました。左膝を横に曲げてしまい靭帯損傷で松葉杖の日々が始まりました。それまでずっと考え続けていたスケートボードに関わることがほとんどできなくなりました。松葉杖ではプッシュの友達とも動きにくいので治ることを願ってスケート雑誌やVHSをずっと見ていました。そんな状態でも「治ったらあのトリックをやってみよう」とか「治ったらあのスポットに行ってみよう」とか考えるのはスケートボードのことばかり。もう自分でもちょっと呆れてなんでそんなにスケートボードなのか、ってことをじっくり考えてみたのを覚えています。
当時「スケートボードは麻薬だ」という記事をスケート雑誌で見ました。誰でもちょっとやってみて楽しくなければもうやりません。でもなんか楽しかったら何度かやってみて自分の変化や成長を実感します。さらに本気になって練習すれば他人にはわからない「自分越え」という快感を何度も何度も体験します。昨日まではできなかったことが自分自身の努力でできるようになるのは本当にとても気持ちがいい。そしてある程度のスキルがある人は必ず全員が通る道があって、そこに至るまでの努力の積み重ねや転んだ痛みや通り抜けた達成感を共有できるのです。そして目の前の人がそのハードルを飛び越えることに一緒になって喜べるし理解し合えるのです。なんだかとても言葉では説明しにくい感覚がそこには確実にあるのです。連帯感、とでも言うのでしょうか、いや、自分で書いていてちょっとピタッとくる日本語が見つかりませんが、スケートボードを続けている人たちには全員当たり前にわかることなのです。
そういう「スケートボーダー全員が当たり前にわかること」を僕は信じています。今まで書かせてもらった雑誌のコラムやブログなんかでは「スケート定規」とか「スケート魂」とか表現していましたが、今思えばそれもピタッと表現できている気がしないのです。世の中は僕らが思ったよりも猛烈なスピードで変化しています。ポケベルは携帯になりスマホになりました。日々目の前で起こっている変化はあとで振り返ればとんでもない大きな変化だったりするのです。「諸行無常」と言われるようにこの世の中には変わらないものはない、ということも真理として理解しています。が、それでも、どう考えても、時代が変わっても、世代が変わっても、あの「スケートボーダー全員が当たり前にわかること」はこれからも決してこの世の中からなくならないと思うのです。そしてその説明しにくいものをいかに磨いていくのか、まだスケートボードに出会っていない人にどうやって伝えるのか、ということを仕事にしたいと思ったのです。「なんでショップをはじめたか」と良く聞かれ「それしかできなかったから」と答えることが多かったのですが、本当はこれが僕のスケートショップをやろうと思った理由です。しかも今年の紆余曲折を経て自分でもやっと気がついた部分も多かったのです。
とても不安定で先の見えない世の中ですが、僕らのミッションである「スケートボードの魅力をより多くの人に伝えること」を粛々と進めていきたいと思っております。インスタントのスタッフは「スケートボーダー全員が当たり前にわかること」をよく理解しているスタッフばかりです。スケートボードの魅力だけでなく、その背景となるカルチャーやクリエイティビティもそれぞれのフィルターを通してよくわかっている連中です。そういうスタッフとのご縁を感謝するとともに、またお互いそれぞれに成長、前進できるようこれからも精進させて頂きます。本年の営業はいくつかの店舗で本日が最終となりますが、インスタント25周年は2021年3月末日まで続きますのでぜひ楽しみにして下さい。
本年もインスタントをご利用頂き本当にありがとうございました。また新年におきましても引き続きよろしくお願い致します。
インスタント代表 本間章郎